大切な家族だったあいつが眠る納骨堂

山が紅葉に染まる頃になると、さびしい感じが漂う。16年前の今頃の季節の日曜日の朝だった。新聞の地方版の「子犬あげます」の記事が夫婦の話題になった。その日の夕方には、絨毯の上で「ミューミュー」と犬らしからぬ声を出す白いふわふわのあいつがいた。以来16年、この家に暮らしたあいつが逝ってしまった。あいつが逝く直前に通っていた動物病院の紹介で、ペット火葬場で焼いてもらった。火葬場併設の納骨堂は断り、家に連れ帰った。
りっぱな骨壷を持って帰ってきた家は、大切な家族が抜けた寂しさに満ちていた。幼稚園の娘があいつの名を呼び「どこにいるの、いつ帰ってくるの」と聞く。何度、説明しても理解しない娘は骨壷を開けようとする。妻が「明日、みんなで納骨堂へ納めに行こう」と言う。一番悲しんでいるのは妻かもしれない。言葉にこもる感情は深く響き、家族は静かにうなづくしかなかった。家族で納骨堂に納める写真を選ぶことにして、アルバムを引っ張り出した。
http://www.memorial-service.co.jp/search/eidaikuyou.html
アルバムに残るあいつは生きていた。涙が出て堪らず、娘が涙を拭いてくれる。この数十年、こんな泣き方をした事が無い。だが、これが弔いなのだろう、しっかり泣いてやることにした。母が寝室に入り、妻が娘を寝かしつけて戻ってくる頃、写真が決まった。年老いて歩くことも不自由なのに、散歩をねだるあいつの写真だ。可愛かった子犬の頃でも、精悍だった頃の雄姿でもなく、一番最近の写真だ。毎日を全力で生き抜いたあいつは、いつでも、今を大切にしていた。納骨堂に眠るときも、そんなあいつでいて欲しかった。

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